君にとって音楽は酸素なのか

 四六時中音楽を聴いている。移動中も、部屋にいるときも、飲み会をしているときも、音楽は常に流れている。ブログを書くときは聴いたり聴かなかったりだけれど、基本的には何時でも聴いている。

 よく言っているけど、別に音楽で救われたなんて思ったことはなくて、でも間違いなく俺は音楽で生かされていて、そんな人間を俺は何人か知っている。   

 大学で音楽系のサークルに入って、そんな人間ばっかり、若しくはそうとまで言わなくても音楽が好きで好きでしょうがない人間ばかりだと思っていたが、なんだかそうでもないような気がしたので、筆を取った。

 僕らより下の世代の人間は間違いなく音楽を聞くハードルが下がっている。良いこと、なんだろう。良いことだと思う。でもなんだか、同じバンドの曲ばかりを、すぐ手が届く距離の流行りの曲ばかりを聴く人が、一定数いるような気がして、もちろんそれが悪いとは言わないけれど、なんだか不思議に思えたので、つらつらと考察してみる。

 尚、本稿における音楽とは特に注釈のない場合、バンド、又はロックバンドのことを指す。もちろんその他にも素晴らしい音楽が存在していることは百も承知だが、そこは腐ってもバンドマンなのでご理解いただきたい。

 繰り返す、君にとって音楽は酸素か?

 

デジタルネイティブの波

 僕らの世代だと、そう珍しくないかもしれないが、僕の家には小学生の頃からパソコンがあったし、パワーポイントでアニメーションのようなものを使って遊んだり、フラッシュゲームに興じて怒られたりしていた。

 僕の両親は、あまり電子機器(ゲーム機や携帯電話)に関して寛容ではなかったので、僕が携帯電話と呼べるものを手にしたのは大学に編入してからのことだった(高専の五年間はiPodとモバイルWi-Fiルーターで凌いだ)し、ゲーム機を買ってもらったことはない。

 でも僕はどうしても手持ちの端末がほしかったので、中学二年生くらいのころにお年玉でiPod touchの四世代を買った。世界が一気に広がるような感覚を覚えた。別に外に持っていっても大したことは出来なかったが、家のWi-FiYouTubeを見まくった。

 その時にはまっていたアニメのMADでONE OK ROCKのriot!!!を聴いたのが、僕の音楽のそもそもの始まりだ。友達から残響リファレンスを借りて、こんなかっこいい音楽があったのかと思った。まぁ、当時はボカロが流行っていたので、僕がどっぷりバンドに浸かるのはもう少し先の話なのだけれど。

 その時、僕の回りの友達がもっていたのは所謂ガラケーだった、家が裕福な奴や物好きな奴はスマホを所持していたが、そんなのはごく一部だった。彼らと深夜意味もなくLINEをするのは面白かったし、特権行為のような気さえした。

 それが、中学を卒業して高校に上がるタイミングで、やれ卒業祝だ、入学祝だなどとスマホの所持率が爆発的に増加した。1997年(若しくは8年)生まれの僕らは、そう言う節目の年代だったと思う。

 詳しく調査したことがないのでわからないが、僕らより下の世代、強いて言うなら三つほど世代があけば、きっとスマホがあるのが当たり前で、息をするより簡単にインターネットに接続できる、真の意味でのデジタルネイティブ世代なのだと思う。

 日常的に自分専用の端末でインターネットに接続し、YouTubeを漁り、謎のストリーミングアプリで広告にイラつきながら音楽を聴く。多分すこし前なら、ちょっと探さないと見つけられなかった流行りのインディーズバンドが、普通のJ-POPと同じ手軽さで聴けるような環境で育って来たのだと思う。

 バンド音楽は多分ひねくれ者の音楽ではなくなったのだ。

 わざわざ、必死になって(自分にとって)良いバンドを探さなくたって、流行っているバンドくらいならすぐにわかる。ロックに触れられる間口は今やとてつもなく広い。

 だからこそ、踊りやすい4つ打ちロックや、熱い歌詞の歌モノロックで満足して、もっと違うものをと追及する人の割合は減ってしまったのではなかろうか。

 つまり、音楽を格好いいと思うハードルが下がって、ゲームで言うライトユーザーのように、音楽を好きだと言う人の割合は増えたが、わざわざ頑張って探してまで新しいバンドやジャンルを開拓しようとするヘビーユーザーのような人々は相対的に少なくなったように見えるのではないかと考える。

 

洋楽厨の洗礼

 好きに、優劣も貴賤もない。それはもちろん理解しているつもりだ。別に音楽が好きでそこに最低限の対価さえ払っているのなら他者から文句を言われる謂れはない。

 ただ勿体ないなと、思っただけのことだ。僕は邦ロックも大好きだが、最近は専ら洋楽を聴いている。一口に邦楽洋楽といっても、片や島国の一ジャンル、片や国外の音楽を総括しているのだから、そこには邦楽だけ聴いていた時には得られない発見があると思う。それを知らずにいるのは勿体ないなと、そう思うのだ。USロックの力強さも、UKロックの陰鬱さも、知らずに満足してしまうのはあまりに勿体ない。

 もちろん、モノを好きになるのはエネルギーを使う。好きになるより嫌いになった方が何倍も楽だ。

 ただ、もう一つ言えるのは年齢の問題もあるのかもしれない。僕の友人達はみんな中学生や小学生から音楽が好きな人が多いが、僕がちゃんと音楽に興味を持ったのは高専三年の時にバンドを始めてからだ。いや、バンドを始めたいと思ったと言うことは元から音楽が好きではあったのだと思うが、まぁ、今みたいに日々新しいものを探してYouTubeを漁ったりはしてなかったように思う。十八歳の頃の僕は洋楽はLinkin ParkGreen Day、Yellowcard、As it isくらいしか聴いてなかったような気もする。僕の場合入り口がラウドロックだったから邦楽より洋楽の方が性にあっていたのかもしれないけど。

 だから、僕が本当に音楽が好きなのかと疑う彼らも、もう二年も経てば色々な音楽を聴くようなるのかもしれない。そうであってほしいと思う。洋楽を聴けとは言わないけれど、もう少し色々聞けば楽しいのになぁと思った老害の戯言だ。