まだ死ぬわけには行かなくなった

 一昨日、親友が死んだ。まだ二十二歳だった。

 お通夜に参列するために約二年ぶりに奈良に向かう新幹線でこれを書いている。  

 中学の頃からの親友で、最初はいけすかないと思っていたが、話してみると滅茶苦茶気があって中学時代はずっと一緒にいた。進路は別れたが、高専時代も遊んでいたし、大学になってからも年に一回か二回は会っていたし、連絡もちょこちょこ取り合っていた。僕はあまり悩むことがないが、悩み事を相談するならまず彼に相談していたし、頻繁に連絡を取らなくたって僕らは一生親友だと思っていた。思っている。

 ゴールデンウィークに遊んだときも元気だったし、流れてしまったが九月末に宮崎にサーフィンをしに行こうと連絡を取ったときも元気そうだった。あれが最後の会話になるのなら、無理にでもいっておけば良かった。

 失ってしまったのだ。唯一無二の親友を。

 まだ数回しか一緒に酒を飲んでない。文化服装学院に受かったこともまだ報告していない。年を取っていって、老けたなぁなんていいながら、でもここは変わんないなぁなんて話もしていない。僕は結婚できないかもしれないけれど、君がもし結婚して子供が生まれたら、なんて意味のない仮定か。

 思い上がりでなければ、僕は君と一番仲が良いと思っていたし、君もそう思ってくれていたなら嬉しい。友情に優劣をつけるなんて馬鹿らしいことで、友情なんてものはある一定値を越えればみんな親友で一番なんてものはなくて、僕は友人は軽率に作るが、親友と呼べる人は数人しかいなくて、でも数人もいれば十分だと思っていて、君はそんななかの掛け替えのない一人だった。

 早すぎるぜ。なぁおい。

 原因はまだ知らされていないが、苦しくなかったならいいけれど。

 僕はちゃんと泣けるだろうか。泣かなくてもちゃんと悲しいのだけれど、こう言うときに僕は泣けない。事態を受け入れた上で泣けないのだ。冷たい人間だとは思いたくないが、どうなのだろう。

 でも君は笑顔の方が喜ぶだろうか。久しぶりに袖を通したブラックスーツと白髪を見て今日も格好いいなぁよっちゃんと言ってくれるだろうか。

 

 僕は今までやり残した事なんてないし、いつ死んでもいいや。と思ってきたけれど、軽率に死ねなくなってしまったじゃないか。こんなことを言っても多分君は喜ばないけれど、君が生きれなかった分のせめて半分くらいは僕が生きたい。なんの慰めにもならないし、僕の人生だけれど、少なくとも死にたいなどとは思えなくなってしまった。

 どうしてくれるんだ。まだ君は俺のライブを見てくれたことも俺の作った服を着てくれたこともないじゃないか。やりきれないよな。こんなのって。